東京トラックショーの残念な展示 ― 2009年10月30日 23時13分35秒
東京トラックショーに行ってきました。
私とは全く関係なさそうなショー思いきや、結構関係ありありでした。
この手のショーに行っていつも思うのはせっかくの技術力のアピールポイントを台無しにしてしまう展示の仕方をしてしまう会社が多いこと。
今回目に付いたのはトラックスケールという計量器を展示していた会社です。 実は私自身も他社で同様の機器を開発していたこともあり、仕組みはよーくわかっています。だからなおさら展示の残念さが目に付いてしまう。
写真はその展示状況です。どこが残念なのかわかりますでしょうか?
見出しが間違っている
「スーパージャンボⅡ 無線通過式」なんて書いてありますね。「無線通過式」とね。これ、ホントは「無線」と「通過式」はくっつけるとおかしくなるんです。通過することを検知する仕組みが「無線」だと読めませんか? 知らない人は勘違いする人もいるでしょう。
トラックスケールというのはロードセルという荷重センサーを使った計量器なんですが、ざっくりいうと車のための体重計と思ってください。
車両全部を乗っけるような秤はじゃまなので、四輪のタイヤの下に個別に敷いて計るんですね。
この時の計り方に2種類あります。静止式と通過式。
- 静止式はセンサーを車の四輪の間隔と同じに4つ置いたところに乗り上げて、そのまま停止して計る方式。
- 通過式はセンサーに車で乗り上げて止まらずに通り過ぎて計る方式。この場合はセンサーは4箇所ではなく2箇所でも良い。2箇所のセンサーを最初は前輪が乗り上げて通過してそのあとに後輪が乗り上げて通過する。
わかりますでしょうか?「通過式」という計量方式と無線は何の因果関係はありません。何らかのゲートの仕組みなら「無線通過式」ってあってもいいかもしれませんけどね。
説明書きが矛盾している
この展示は「通過式」の展示です。一番下の行を見てください。「通過及び静止計量タイプ選択可」と書いてありますね。
こういう場合は「静止計量式も選択可」と書かなければいけない。「通過式」の展示なんだから。「式」と「タイプ」の二種類の同じ言葉を違う表現で使っているところも×。
製品企画が意味不明
このトラックスケールの最大の特徴であるセールスポイントが意味不明ですね。展示されているものは一般家庭用体重計でお馴染みの表示器や操作のためのキーがついています。
実はこの手の表示は普通のトラックスケールの場合はここにはないんです。普通は4つなら4つのセンサー部分とロードセルアンプというものを接続する。これがまず有線部分。次の有線部分はロードセルアンプとCPUを内蔵している本当の計量器部分の筐体とを接続する。
ロードセルアンプとCPUが一体になった場合はロードセルとアンプとの間の有線接続は表に出ません。あくまでも一体化しただけです。
つまり、トラックに踏まれるセンサー部分にCPUを持ってきたのがこの製品の特徴なわけです。電源もバッテリ供給で内蔵させたというところがミソ。
ここでわからないのが、何で表示器やキーまでつけちゃったかというところです。すぐ壊しちゃいますよ。絶対に。荷重がかからないところに電源、アンプ、CPUは逃がして表示器や操作部は持たせない。こうしないと「無線」にする意味がないです。
正しい製品企画としては表示や操作部を別筐体で持たせる。センサー側は防滴、堅牢構造にする。表示は離れた別筐体にして、事務所などで表示させる。
結局無線なのはどこか
通常トラックスケールなどは何台ものトラックを次々と計ったり、履歴を管理したりするためのデータ収集や単なるプリンタで印字するための仕組みが必要です。
ロードセルというセンサーからのデータを処理して重量を測るCPUとデータ処理をする外側のシステムの二種類があるということです。このデータ処理システムとの接続点という機能も必要になります。
じゃあ、この展示は計量部分とデータ管理システムが無線化されたのかというとそうでもないようでした。別筐体の表示器とプリンタなどとの間が無線化されていたようです。表示などの同じ機能を2箇所に持たせたということですね。企画の意味が良くわからないですね。 本体の表示器とキーはなくすべきだと思います。
ようするに、製品企画の段階から「一体化」と「無線化」をごちゃ混ぜに考えている。つくっちゃたものは仕方がないけど、最低限、この辺をきちんと使い分けて説明する能力も必要でしょう。
写真の展示でそんなこんながわかりましたでしょうか?
ちなみに、この展示の会社はこちら。
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