PENTAXの古いレンズは天体写真に使えるのか実験 ― 2015年12月06日 22時38分10秒
PENTAXのフルサイズデジタル一眼レフカメラの発売が待ち望んでいたのですが、古いフィルムカメラ時代のレンズがどの程度使えるのかということを天体写真としてキチンと比較検証した記事を見かけませんので実験してみました。
今回実験するのはSMC TAKUMAR 50mm F1.4、smc PENTAX-M 50mm F1.4、smc PENTAX-M 50mm F1.7、smc PENTAX-A 50mm F1.7、smc PENTAX-M 24mm F2.8、TAMRON SP 90mm F2.5の6本です。
撮影日:2015年12月5日
撮影場所:富士ヶ嶺
ボディ:PENTAX K-30
ISO 1600、30秒(50mmレンズ共通)
アイベルCD-1と自作モータードライブコントローラによる恒星時追尾
※極軸合わせ不完全で流れている写真あり
■SMC TAKUMAR 50mm F1.4(カビなし、バルサム切れによるクモリなし、黄変あり)
☆絞り開放
☆F2
☆F2.8
■smc PENTAX-M 50mm F1.4(カビなし、バルサム切れによるクモリなし)
☆絞り開放
☆F2
☆F2.8
■smc PENTAX-M 50mm F1.7(カビなし、バルサム切れによるクモリなし)
☆絞り開放
☆F2
☆F2.8
■smc PENTAX-A 50mm F1.7(カビなし、バルサム切れによるクモリなし)
※無限遠ピントずれてる
☆絞り開放
☆F2
☆F2.8
■smc PENTAX-M 24mm F2.8(バルサム切れによるクモリあり)
■TAMRON SP90mm F2.5(カビなし、バルサム切れによるクモリなし)
■所感
50mmF1.4に関してはTAKMARもsmc PENTAX-Mもどちらもほとんど同じ結果に見えるので設計が同じだと言われているのは本当なのでしょう。50mmF1.7については以前にテストした若干のバルサム切れによるクモリありのレンズと今回のクモリなしのレンズのどちらも開放時の輝星の周りのリング状のニジミは同じようにでているのでクモリのせいではなく設計に依存しているのでしょう。
ところが、smc PENTAX-Aの50mmF1.7には輝星の周りのリング状のニジミはないので設計の違いかコーティングの差による違いなのではないかと想像しています。
24mmはAPS-Cにクロップしているにも関わらず周辺の収差が酷いので星撮りには論外でしょう。
TAMRON SP90mmもF4 まで絞ってもフリンジは除去されないのであえて使う必要性は感じません。
50mmはいずれも2.8まで絞ればそこそこ使えるとは思いますので絞り開放だとフリンジとか収差が盛大に出てF値が明るいメリットは構図合わせ程度、ということになってしまいます。
こちらもあえて星撮りにつかうようなレンズではないでしょう。特にF1.4を選ぶ理由はほとんどないと言っていいでしょう。
いずれのレンズもフルサイズのボディが出て使い物になるような性能ではないので、「コレクション」していましたが手放していこうと思います。
ヤフオクでの中古レンズ出品者の悪質性 ― 2015年11月11日 23時42分43秒
ヤフーオークションでは中古レンズの出品者が数多くいます。出品者を、「無責任」と「悪質」で分類してみましょう。ちなみに、私自身も中古レンズは出品しますが正直なことを書くようにしていますし、基本的に明らかなジャンク以外はノークレームノーリターンなどは謳いません。
1.無責任な出品者
「当方専門知識がありませんので詳しいことはわかりません」と書いている出品者。こいつらは最悪ですが、悪質ではありません。高い金額で入札しなければいいだけだからです。このような出品者は例外なく、ノークレームノーリターンと書いています。
専門知識がないような人間が大量に中古レンズを扱うべきではありません。
ちなみに、最近は中古カメラ屋さんで明らかに「せどり」目的の「素人」が商品を物色している姿が多くなりました。彼らは「カメラが好き」から出発していないので知識がないのは確かで素人なのも確かです。
そのような人間が出品しているのだとは思いますが、品物を売るのに専門知識は関係なく、どこまで責任を持つか、ということだということが理解できていません。
そういう意味で、オークション出品者としても素人と言えるでしょう。
よっぽど安い金額で落札できない限り、彼らとは関わりたくないですね。
2.悪質な出品者
ほぼ、「業者」ですが、パターンが大きく二つに分かれます。
一つ目のパターンは「新品級」、「新品同様」、「光学系問題なし」などをキャッチフレーズとして強調している出品者です。同じ出品者が10個出品していてそのうちのひとつだけでそのような表現を使っているのならば信用できますが、すべての出品が同じ調子の出品の場合はもはや「ウソ丸出し」です。
頭が悪いとしか思えません。
当然、このような出品者もほぼ相手にしません。
但し、このパターンは一目瞭然なので取引してハズレだったとしてもこちらも身構えているので「最悪」ではありません。
「最悪」なのは、キチンと商品の状態を詳しく記載している内容に「ウソ」がある出品者です。私は今回このパターンにはじめて出会って、騙されました。このような出品者は悪い評価をすると100%報復評価をしてくるので評価はしないようにしています。
なので、間接的に少し書いてみようと思ったわけです。
今回落札したレンズは以下です。JAPANの文字の右側のフィルタ枠にアタリがあり、凹んでいるのでフィルタ装着や前枠を外してレンズ分解もできません。50mmの文字の左側のフィルタ枠部分は傷があり、白く見えています。つまり、このレンズは外観には問題があるレンズでした。
落札金額は5980円+送料756円です。発送連絡で伝票番号の通知はなく、勝手に午前中配達指定などで送ってきました。梱包はぎりぎりセーフ。バルサム切れはぱっと見はなかったので質問に対する回答は問題なし。(後述)
「アタリ」があるのが分かっていればもちろん入札などしませんでした。フィルター枠にアタリがあると分解もそのままでは出来なくなりますので、当然論外なわけですが、写真でもほとんどアタリは分かりませんでした。
上記の写真も具体的に位置を指摘しなければアタリには気付かないかもしれません。
以下が出品説明です。全文引用
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smc PENTAX-M 1:1.4 50mm F1.4 標準 ペンタックス Kマウント 25N-652
ペンタックスの50mm F1.4です。
ペンタックスKマウント、スーパーマルチコート。
6群7枚からなる変形ガウスタイプのレンズ構成で、諸収差が良好に補正されています。
FA50mmF1.4と基本レンズ構成は同一です。
smc PENTAX-M 1:1.4 50mm
ASAHI OPT.CO,.JAPAN
ペンタックスKマウント(Kmマウント)
ブラックカラー
絞り羽 8枚
最短撮影距離 0.45m
LENS MADE IN JAPAN
ペンタックスKマウントですので、ペンタックス製デシタル一眼レフで使用できます。また、アダプタを介して、各社ミラーレス等にて使用できます。(アダプタを使った場合に全ての機能を保障するものではありません)
ヘリコイドは全域で動きます。
滑らか適切なトルクです。
絞りは正常です。
全域で滑らかに動きます。
光学系は、目立つゴミ、キズはありません。
レンズ表面コーティングに若干の痛み(汚れ除去痕、スレ、汚れの付着)があります。
少しチリの混入があります。
カラーバランスは正常です。
外観は、目立つキズやアタリはありません。
本体のみ。付属品はありません。
記載していないものは一切付きません。
ヴィンテージレンズの特性を十分ご理解の上、入札して下さい。
ヴィンテージ品(非常に古いレンズ)ですので、チェック時には正常でもお届け時に問題が生じる場合もあります。その場合はオークション時記載の返品要件による修理・代品交換での対応となります。万一、出荷までに新たな問題が見つかった場合、取引をキャンセルさせて頂く場合があります。
また現代レンズの常識とは違う価値観・取扱い方法が必要になります。ある程度の劣化はヴィンテージ品では必ず存在することにご理解ください。
落札後3営業日以内に送金完了して下さい。
取引方法はオークション時記載の方法のみです。ページ下の決済方法、発送方法・送料の欄(送料表へのリンクあり)をご覧ください。
これらの取引条件に同意される方のみ入札して下さい。
同梱包可能です。
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事前に質問した内容と回答は以下です。
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【質問】
詳細な出品説明に感心しながらいくつか同レンズの説明を見させていただきました。このレンズはバルサム切れについて言及されていないのですが、バルサム切れはないと考えてよろしいでしょうか?同じ開始価格のレンズでバルサム切れについて言及されているものがありましたので確認させていただきました。
【A 回答 11月 8日 15時 20分】
チェックした際に気が付いた難があれば記載しています。この個体は通常の目視で解るレベルのバルサム切れはありません。
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smc PENTAX-M標準レンズのバルサム切れ確認 ― 2015年11月03日 19時57分39秒
中古のレンズで「バルサム切れ」という言葉を聞いたことはあってもそれがどんな状態を示すのか。いろいろと検索しても出てきませんよね。「クモリ」って言葉も出てきますが、それと、バルサム切れの関係も示されないことが多いようです。
中古レンズ屋さんの店頭でレンズの状態を確認しても、見慣れている人でも見逃してしまうようなこともあります。
店頭でLEDライト持ち込んで確認している人なんか目撃したこともありませんし、私自身も買う気満々で中古カメラ屋さんに行くことはほとんどなく、気ままに立ち寄って「出会い」を楽しんでいる程度です。
最近はヤフーオークションでレンズを手に入れることも多いのですが、知識があってもなくても、「クモリ」や「バルサム切れ」がどんな状態なのかキチンと認識していないで出品している人も多いわけで、結局は買ってみて現物確認するまでは本当のことは分からないのです。
最近買ったレンズで分解しない状態でバルサム切れが分かる写真を撮ってみましたので、紹介しておきたいと思います。
中古でバルサム切れしていない個体には出会わないのではないかと言われているレンズですね。
このレンズもヤフオクで送料込み3101円で入手したもの。
カビなどは皆無でぱっと見はすごくきれいです。
絞りの動作が若干ぎこちない感じなところが問題ではありました。
リア側のレンズもすごくきれいです。
このレンズは後玉の一番外側から数えて3枚目のレンズといいますか、3群目の内側のレンズですが、それがクモッています。どのレンズが貼り合わせレンズなのかの構成が分かると確認する時の参考になります。
これがいわゆる「バルサム切れ」という奴で、結果的にクモって見えるわけです。レンズを貼り合わせている接着剤の剥離や変質が原因です。
最近はこれを剥がして清掃した上で再度張り合わせて修理するという猛者もいらっしゃるようですが、私はそこまでの勇気は持てないでいます。
これは貼り合わせレンズはありますが1.4とは違って、バルサム切れの個体はあまり存在しないと言われているレンズです。しかしながらその珍しいバルサム切れのレンズを入手してしまいました。同じくヤフオク入手で送料込み2897円でした。
前から見た状態も後ろから見た状態も結構良い状態のレンズではあります。
リア側から光を通してみると汚れがある感じですが、クモリなのか光の具合なのか分かりづらいですね。
斜めから光を差し込むように写すと少し分かってきますね。レンズの周辺がバルサム切れでクモッています。
いかがでしたでしょうか?
今回紹介したレンズは分解しなくとも外側から近いレンズがバルサム切れを起こしていたので分かりやすいですが、広角レンズの中間の玉に問題がある場合など、ほとんど分からないようなこともあります。
分解清掃した24mmF2.8もそうでした。分解するまではっきりとどのレンズが問題なのかは分かりませんでした。
smc PENTAX 24mmF2.8分解清掃 ― 2015年10月31日 23時44分11秒
やはり、ちょっと見の外観からはクモリは良く分かりませんね。
今回のレンズはsmc PENTAX 24mm F2.8です。送料込み4900円でした。
飾りリングを外します。一番前のレンズはカニ目では外せません。まずは前玉群を外す必要があります。奥にある取り付けリングをカニ目で回して外す必要があります。
前玉群を以下の写真の右下にあるリングを外すとスッポリ抜けます。そうすると一番前のレンズを固定しているリングを手で回すことが出来るようになるので、それを回して外したところです。
前玉群を外して絞りユニットを覗いたところ。後玉の一番前側のレンズもこの状態で清掃することは可能です。
前玉群の二枚目のレンズはこちら。カニ目で取り付け枠を回さないと外せません。
前玉群の二枚目のレンズを外したところ。
前玉群のユニット全体。
前玉群の三枚目が見えました。これもカニ目で外す必要があります。
前玉群の三枚目のレンズ。実はこれがバルサム切れでクモっていました。他のレンズには問題ありませんでした。
クモリはこんな感じ。光の当て具合では全く問題なく見えるのが怖いところ。
前玉群の四枚目は以下。こちらも全く問題なしでした。
後玉群はマウント側のカニ目で外します。
汚れやホコリはありましたが、こちらも問題なしでした。
このクモリ方だと星の写真は無理っぽいですね。一般撮影用で保持するか、手放すかは考え中です。
smc PENTAX-M 標準レンズで星を撮る ― 2015年10月25日 18時14分31秒
smc PENTAX-Mの標準レンズの2本を星撮りで試します。
テストするレンズはsmc PENTAX-M 50mm F1.7とsmc PENTAX-M 50mm F2です。どちらもヤフオクで入手。
F1.7は2300円+597円=2897円、F2は2500円+756円=3256円で入手。
F値が近いレンズですが開放の描写は驚くほど違いました。
こちらはsmc PENTAX-M 50mm F2です。接着剤シミがありましたので分解清掃しました。もともとカビはありませんでした。
こちらはsmc PENTAX-M 50mm F1.7です。こちらもヤフオク入手品ですが、見た目はかなりきれいでした。但し、後球の貼り合わせレンズ部分の周辺にクモリがあります。分解するとこれが分かるのですが、組み込んでしまうと全く分からなくなるのが面白いところ。
星の写真を撮る場合は夜露をふき取ることがあるために私の場合は基本的にプロテクトフィルターを使っています。
■開放F値での撮影テスト
ボディはK-30です。
まずは、smc PENTAX-M 50mm F1.7です。
ISO1600、F1.7、30秒露出。恒星時追尾していますが固定が甘く、極軸調整不良のための流れがありますのでそれを加味してください。
フリンジというか、「にじみ」がかなりあるのが分かります。
次はsmc PENTAX-M 50mm F2
ISO1600、F2、30秒露出。条件はF1.7と同じですが、こちらはにじみは少なくなっています。
■絞って撮影テスト
smc PENTAX-M 50mm F1.7をF2.8に絞ったもの。
ISO3200、30秒露出です。開放とは異なり、かなりまともになりました。
smc PENTAX-M 50mm F2をF2.8とF4の間まで絞ったもの。本来はF2.8で統一すべきですが、F1.7と同様に2クリック絞ったらF2.8ではないことに後から気付いた、という始末。
ISO6400、30秒露出です。ISO3200で統一していないことに後から気付いた二重のミスです。
絞ることが前提ならばF1.7の方の収差が少ない印象ですが、F2でも実用になる感じです。
F1.7の絞り開放の画像がバルサム切れの問題ならばバルサム切れのないF1.7をためしたいところです。
これから入手するのであれば、バルサム切れの心配が皆無なF2が無難でしょうか。
F2の方は貼り合わせレンズを全く使っていないため、バルサム切れ問題は発生しないのです。
F1.7のバルサム切れは軽度のものの場合は分解しないと分からないので良品を入手するまで試行錯誤を繰り返すのか、という問題があります。
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