五藤テレスコープのMARK-X赤道儀用モータードライブについて ― 2014年05月03日 09時03分04秒
五藤テレスコープが限定個数でMARK-X赤道儀用のモータードライブの発売を発表しました。
本家の五藤光学がモータードライブのサポートをしないので私自身、元社員としてモータードライブの提供について勝手にお手伝いしていました。
前もって弁解しておきますが、社内資料を持ち出したとかそういうことで解析したのではなく、自分のものを分解して解析しています。
以下は音叉式モータードライブのモータ、P型モータードライブのモータ、自作のコントローラ内蔵一体型モータードライブとそれぞれの回転止めピン。コントローラ内蔵一体型のモータードライブをお買い上げいただいた方からいただいた写真です。
現在では自分が使っているMARK-X赤道儀のモータードライブは完全オリジナルで自作しましたし、20台ほどのコントローラ、モータードライブの提供もさせていただきました。
メインで使用しているものはSP赤道儀の架台と連結させてMD-5のモータとベルトでベースモデルの微動軸と連結して駆動させています。
天文ガイドでもオリジナルのモータードライブの製作記事と基板配布などの動きもありました。このモータードライブも一時期私自身も使っていました。
星の家製のモータードライブもありましたね。
さて、そのような経緯があるMARK-X赤道儀用のモータードライブですが、今回の五藤テレスコープの発表では「語られていない」ことを想像で勝手に補足説明させていただきます。
一番の説明不足は以下です。
●新しいコントローラでは古いモーターの駆動はできません
マイクロステップ駆動ができるのは現実的にはバイポーラステッピングモータのみです。※ユニポーラに対応したマイクロステップ駆動のコントローラICがないからです。オリジナルで設計すればもちろんユニポーラでのマイクロステップ駆動も対応できるとは思います。
古いモータはユニポーラステッピングモータを高い減速比の内蔵ギアと更にモーターケース内に減速ギアを設けて使っています。
これは定電圧駆動で電流をあまり流さないようにするための措置で、相抵抗140Ω(P型)から100Ω(コメットトラッカー)程度のPM型ユニポーラステッピングモータを使っているためです。
当時の電源電圧は12Vが主流でした。
これで相当たり100mA前後が流れますが、当時の五藤のコントローラは2-2相励磁で駆動していたので、200mA前後の電流が流れる計算です。
PICマイコンだけはマイクロステップ駆動はできませんのでおそらく、東芝のコントローラICである、TB6608FNGを使っているものと思われます。この根拠はもうひとつあって、去年の胎内星祭で五藤テレスコープはブースを出していましたがそのお隣のお隣ではモータードライブの自作の権威である、外山保広さんがTB6608FNGでモーター駆動の実験をされていたからです。
外山さんは天文ガイドでのMARK-X赤道儀のモータードライブの記事も書かれていました。
バイポーラモータでマイクロステップ駆動をするためにはモータの相抵抗は余り高いものは適しません。先の東芝のコントローラはチョッパーによる定電流駆動に対応しています。
この場合、相抵抗は10Ω程度が適切だとのご教授もいただいておりました。
それはビクセンのMT-1をバイポーラ接続にしてこのコントローラでは脱調するということを言われていたからです。MT-1は相抵抗が20Ωですがバイポーラ接続で使うとその倍の40Ωになってしまいます。これではだめだということです。
古い五藤光学のモータはユニポーラモータで相抵抗が100Ω前後ですからバイポーラ接続すると200Ω前後になり、全く駆動できないでしょう。
なお、PICマイコンで云々ということを発表されていますが、マイクロステップ駆動により通常のパルスを1/32に分解します。つまり供給クロック周波数は通常の32倍で供給する必要がありますが、PICで任意の周波数に調整可能ですので、PICを使っているのは単にクロック周波数発生部分でしょう。
●なぜ、太陽時、月時、星景モード対応にしないか
驚いたことに、いまどき、平均太陽時、月時、星景モード駆動に対応していません。PICマイコンでクロック生成するなら全く難しい技術は不要です。
意味不明です。こればっかりは理由がわかりません。オートガイダー対応を喜ぶ人もいると思いますが、これも最近のデジタルカメラの進歩から余り有効なスペックではありません。
短時間露出をコンポジットすることが一般的になっているからです。
一方でオートガイダー対応しなければいけないような長焦点の望遠鏡を使っている人はとっくに他の赤道儀を使っているか、自分たちで改造しているか、自作している人たちです。
MARK-X赤道儀を使っているけどモータードライブが欲しい人というのは「初心者」な人たちなはずです。ヤフオクでMARK-X手に入れたけどモータードライブないな、というような人たち。
昔から変わらず、五藤はマーケティングができていません。
どうせ出すなら2軸ではなく1軸のモータードライブだったはずです。それでも太陽時、月時、星景モード対応は必須。
手前味噌ですが、こんなモータードライブを出して欲しかったですね。コントローラ内蔵で電源供給するだけで駆動できるコンパクトなモータードライブです。
冒頭の写真の方もモータードライブ持ってるのに当方のコントローラ内蔵一体型のモータードライブを購入されたわけです。古いモータードライブは「コレクション」で実稼動は小さい一体型も使われるのでしょう。
私自身、コメットトラッカー持ってましたが、邪魔なんですよモーターに接続するケーブルが。
1軸でしか使わない時も大きくて存在そのものが邪魔。
気楽に「ぽん着け」でさくっと撮影に入りたいのにコントローラと二本のケーブルが邪魔で使いたくなくなる。
MARK-X自身のコンセプトと正反対のオプションだったわけです。
そのことが全く分かっていないのが、今回発表されたモータードライブです。
●ということでMARK-X対応はもちろん、ビクセン用の対応など今後も行います
本家、五藤光学、五藤テレスコープのモータードライブがたいしたものではなかったので、今後も対応はさせて頂きます。
五藤よりも当方のモータードライブ、コントローラが優れている点は以下です。
(1) 太陽時、月時、星景モード対応
(2) コメットトラッカーモード対応(しかし微調整要)
(3) 五藤以外の各社赤道儀に対応可能
(4) 五藤の古いモータ、音叉式モータードライブのモータなどにも対応可能
(5) リモートスイッチ外付けで可変速での増速・逆転可能
(6) リモートスイッチコネクタ経由でオートガイダー対応も可能(要・自作)
(7) 1軸モータ2組で2軸コントロールも可能
当方のモータードライブで劣っている点はマイクロステップ駆動できないところ。これは追加設計対応を考えています。
それと一番の劣っている点は個人での製造能力。品質管理ができていないところ。これはある意味致命的。
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