給与条件を確かめると内定を取り消す会社2014年09月19日 02時17分11秒

応募から最終的に内定をもらうまでに2ヶ月かかった会社の話です。
ハローワーク求人です。

まずは求人票を見てみましょう。


個別の解説の前に最近分かったことがあります。
それは求人票上は労働基準法に違反する内容が欠落してしまうということです。

ハローワークの扱う求人が労働基準法を守っている会社の求人のみ、ということではなく、ハローワークのお役所仕事としては、そもそも会社というものは労働基準法を守るものだという前提になっているということです。
なので、例えば求人を出す企業が何らかの申し込み書式に従って求人を出すときに欠落した情報は自動的に労働基準法に基づいた内容が記載されるということです。

例えば有給休暇の項目がありますが、入社6ヶ月後10日、という内容はデフォルト設定です。
上記ではない別の求人の会社では実際に話を聞いてみると入社翌月に3日、さらに翌月5日というように増えて半年後は14日というような会社もありました。
その会社の求人票も入社6ヶ月後10日となっていました。

この会社の求人票での着目点は「時間外なし」と試用期間中は「職務手当」なし、という点です。給与条件は31万円~57万円ということになっています。
「職務手当」は2万円なので試用期間中は正規の給与から2万円少ないだけだと読めてしまいます。事実であれば、その程度なら何の問題もないでしょう。


以下、経緯と問題点を記しておきます。

■内定までに2ヶ月かかった

この会社の社長は韓国と密接なつながりがあり月の半分くらいは韓国に行っているらしいです。だからといって社長との面接の調整ができずに2ヶ月かかったわけではありません。

書類送付(メール):7月4日
一次面接(総務と技術者には見えない人物):7月16日
二次面接(技術が全く分からない営業):8月26日
三次面接(社長と韓国人の研究所長):9月10日

一次面接までは普通の対応でしたが、それ以降が異常に遅い。

二次面接が社長でその調整が必要だったのならばわかりますが、そうではありません。何も分からない素人の営業との面接が必要なのかすら疑わしいし、スケジュールの調整能力も疑います。

当然のことながら、二次面接の前の時点で怪しい会社認定はしているのですが、「怖いもの見たさ」で最後まで進めます。
また、二次面接以降の日程についてはこちらからメールで催促した結果日程が決まっているような状況です。
求人票の「急募」も意味が分かりません。

社長との面接では私の年齢の高さを気にしていたということです。高齢で「柔軟性」について疑問がある、とのこと。
そのような心配をする時点で柔軟性がないのはこの会社の社長自身。

■内定通知方法

三次面接で社長から口頭で内定通知。書面での通知はなし。

・試用期間中は基本的に30万円(誰でも最初は30万円としている)
・試用期間後は「年齢給」を加えて41万円位
・試用期間中の給与は35万円としても良いけど・・・相談する

以上が内定通知の全てです。
当然、即答は避けて次週の金曜日までに返事をすることにしました。

■条件付辞退

三次面接を受けた週の金曜日に条件付で辞退の連絡をしました。
内容としては「試用期間中の給与は30万なのか35万なのか?試用期間後の給与は明確にはいくらなのか。明確にできないのであれば辞退します。」という感じです。

■メールでの条件提示

メールでのやり取りの窓口は全て総務:管理部門の責任者です。実は社長の配偶者ですが、労働基準法は全く理解していないと思われます。
メールではなく電話で連絡を取ろうとしてきます。
要は証拠を残さないようにしているようです。
一方で私は証拠を残したいし、そもそも書面通知しないのは労働基準法違反です。
※実際の雇用契約の時点で雇用契約書があれば良いという考えもありますが、実際には内定時の同様の内容の労働条件通知書を書面提示するのがまともな会社の対応です。

総務:管理部門はルーチンワークとして労働条件通知書を送り付ければ良いだけです。書式は厚生労働省のホームページで公開されています。機械的にそれさえしてくれれば何も質問することなどないのです。

会社側からのメールの内容は以下です。

> 3ヵ月試用期間中の給与額は、月額30万円と交通費となります。 
> 試用期間以降の4ヶ月目からは、年商500万円位からと考えています。
> 月給にしますと約41万円台位からスタートさせていただきたいと考えております。
> 先日もお話しさせていただいたようですが、試用期間の評価により多少の変動は、 
> あるかもしれないですが、現段階では、上記のような形で考えております。
> 金額的にご不満な所もある事かと思いますが、最初から高額給与で、決定してしまいますと
> お互いに後に要求が多くなったり、不満が溜まったりとあまりよい結果に
> ならないので、状況や仕事内容評価に応じて昇給していきたいと考えています。

メール引用そのままです。まあ、「年商」というのは「年収」の誤字ですね。

■残業手当

求人票には「時間外なし」と書かれていますし、給与条件でも残業については言及されていないので私は更に質問しました。

「残業手当なし(残業手当という概念がない)という条件で検討して回答します。間違っていたら指摘をお願いします」

これに対して総務:管理部門の責任者から電話で質問を受けました。

「残業手当の概念がないっていうのは残業したくないって意味ですか?」

もう、完全に想定外の対応で頭がおかしいです。
「いや、残業したら残業手当はつくんですか?」と私。

それに対して給与額には20時間分の残業手当が含まれている、とのことでした。その場でじゃあ20時間を越えたら残業手当が支払われるのか?っていう質問は電話ではしませんでした。
メールで計算したものを提示して質問することにしました。
計算した結果のEXCELファイルをメールで送りつけました。

■結局内定取り消し

残業手当の計算方法のEXCELファイルが正しいかどうかの回答を求めましたが、その回答によると残業は20時間以内でお願いしている、という内容と、今回は他の人間の採用を決めたので募集は打ち切ったという内容です。
これが9月19日のこと。

つまり、私の質問の「残業手当という概念がない」というのは事実上は正解で、それについて追求したので内定取り消しです。
恐らく20時間を越える残業はなんやかんやで「サービス残業」にするつもりなのでしょう。

「他の人に決めた」ということはタイミング的には明らかにウソだと思いますが、内定取り消しという通達には問題があり、他の人を採用したということを通達することにより問題は発生しないという考えでもあったのでしょう。
しかし、表現をどのようにしようと給与条件を確かめている内定者に対して、都合が悪くなった、もしくはめんどくさくなったので内定を取り消しただけです。

残業手当を追加で計算したくないために「みなし残業」というシステムを使う会社はかなり多いのも事実です。
それは否定しませんが、「給与計算の仕組み」は残しておかないと労働基準法違反が明らかになります。
どうせ違法行為をするのであれば、そのような内容も含めてきちんと労働条件通知書を作っておけば何の問題もないでしょう。

もっといえば、最初から正直に明言してもらっていればその会社を信用できたのです。恐らく内定承諾していたでしょう。

こういった会社の問題点ですが、契約的なところを気にも留めない能力のない人間を採用して何がやりたいのか、ってことです。

■求人票との食い違いのおさらい

この求人票は現実とは以下の点が異なります。

・試用期間の給与条件が実は30万円であること
・試用期間後の給与条件が試用期間中の給与額に職務手当を追加したものではないこと
・残業手当を支払う仕組みが現実的にはないこと